(株)プラウシップ 代表取締役
千葉武雄氏(58歳)

広大な北海道には、専門特化した技術や豊富な現場経験を有する中小企業が各地に点在している。しかし、中小企業が単独で自社製品をつくることは現実的には難しく、北海道のものづくりのジレンマがそこにある。株式会社プラウシップでは、そうした中小企業の可能性に着目し、中小企業同士の連携と産学官を軸にしたものづくりを推進。「北のブランドものづくり工房」と銘打った思いを、同社代表取締役千葉武雄さんにうかがった。
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株式会社プラウシップは、役員構成からすでに特徴が出ている。
千葉武雄さんが経営する株式会社白石ゴム製作所を筆頭に、コンピュータソフト開発会社や三次元設計を専門とする会社、中小企業向けISOを提案するオフィスなど業務内容の異なる企業のトップが同社の取締役に名を連ねている。
この構成企業の多様性こそプラウシップの強み。中小企業1社では実現できないものづくりへの可能性を秘めている。同社を支援する協力団体には北海道大学や北海道立工業試験場、産業技術総合研究所北海道センターなど北海道を代表する“知”が集結。「北のブランド」確立への体制を整えている。
「北海道の不景気がこのまま続けば、致命的な打撃を受けるのは中小企業です。自衛のため、北海道のものづくりを活性化させるためには、業種を超えた企業同士の連携、さらには研究機関の知恵と行政の理解を得たものづくりが必要不可欠。プラウシップの存在意義はそこにあります」と、千葉さんは設立の動機を語る。
プラウシップでは自社で企画を立案、及び「こんな製品はできないだろうか」という問い合わせにも対応する。
それらのアイデアを議題に運営委員会で検討した後は、前述の協力団体に全国を視野に入れた関連技術や先進技術を問い合わせる。先行特許の有無次第で進める方向性を再度検討し、適切なライセンシングや技術支援を専門機関に依頼。あるいは企画実現に必要な技術やノウハウを持つ中小企業を選定するなど、どの案件にも対応できる“コーディネーター”としての手腕も求められている。
そのため、北海道中小企業家同友会産学官連携研究会に所属するなど日頃からの人脈づくり・情報交換は欠かせないと千葉さんはいう。「特に札幌の中心部にあるHiNTさんには、打ち合わせや勉強会、例会など研究開発にいたるさまざまな過程でいつもお世話になっています。本来、民間の中小企業が自力では知りえないような最新かつハイレベルの情報を発信してくれる機関として頼りにしております」と全幅の信頼を寄せている。
千葉さんが産学官の道を歩み始めるには、きっかけとなる製品開発があった。
もともとゴム製品の製造・加工・工事を手がける白石ゴム製作所を経営するかたわら、ラジコンで動かす農薬散布ボート『ラジボー』など異業種企業間での製品開発の実績はもっていた。受注を待っているだけでは、経営が先細りになるのは目に見えている。なんとかしなければという思いは日増しに強くなっていったという。
そして2000年、札幌市から思いもかけないオファーがきた。産学官クラスター事業プロジェクトとして着氷防止ゴムマットが作れないかという依頼だった。
北海道の冬は路面だけでなく屋外の階段や玄関先も凍って“ツルツル”になり、若者でさえ歩行が困難になる。ましてや、足腰が弱った高齢者や杖の愛用者には—。
そこで札幌市が北海道大学などの研究機関と共に「氷が着かないゴムマット」の実用化に乗り出し、ゴムのスペシャリストである白石ゴム製作所に技術協力を依頼してきたのだ。
このときの産学官プロジェクトへの参画が、千葉さんには「人生の転機」となった。 「産学官という言葉の重みに初めの頃は緊張もしましたが、先生方と出会えたことで生まれ変わったようなもの。それだけ刺激的な経験でした」。
できない理由よりも、できる理由を考えろ。行き詰まったときは原点に立ち返れば必ずヒントが見つかる。そしてなにより、絶対にあきらめてはいけない—。
ものづくりの根本を辛抱強く訴える担当教授の言葉は、千葉さんの中でその後のものづくりの大きな柱となった。そうして、マット上の氷を足で踏んだだけで氷が割れて払い落とすことができる『エアーバック式着氷防止エアーマット』が完成。2001年度の北海道新商品開発奨励賞を受賞した。この実績が弾みとなり、千葉さんの周囲には徐々に産学官の有志が集まり始め、プラウシップ設立の先導役として歩き始めることとなった。
千葉さんの「運命を変えた」着氷防止エアーマット。介護保険補助制度摘要品にも認定されている。
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