写真右からKCMエンジニアリング株式会社代表取締役社長 鈴木勝彦氏(50歳)、
同社取締役事業本部長 内田景己氏(51歳)

日本最大の湿原地、釧路湿原が広がる道東の地で、釧路経済の将来を担う技術開発に取り組むKCMエンジニアリング株式会社。2007年5月に、日本で唯一石炭の坑内堀りを続ける釧路コールマイン株式会社100%出資の新会社として設立した。北海道大学、産業技術総合研究所との共同研究を進め、「赤外線吸収式メタンガスセンサ」の実用化を目指す。“市民炭鉱”が踏み出した新たな一歩を追った。
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北海道経済の一時代を築いた石炭採掘で地方が潤う時代は終わり、いまや日本は世界最大の石炭輸入国に転じた。中国やベトナムでは国を挙げて採炭事業に取り組み、“黒ダイヤ”は日本を離れたアジア諸国で再びその輝きを取り戻した。
しかし一方では、急ピッチで作業が進められる採炭現場での痛ましい事故が後を絶たない。採炭の際に発生するメタンガスによる災害で時には命をも落とす“炭鉱マン”たち。
こうした悲惨な現状を打破すべく、KCMエンジニアリング株式会社では現在、高精度のメタンガスセンサの開発に取り組んでいる。同社は2007年5月に親会社である釧路コールマイン株式会社から海外向けの技術開発業務を一手に担う新会社として設立された。採炭現場を知り尽くした釧路の“炭鉱マン”が、海外の仲間の命を預かる「赤外線吸収式メタンガスセンサ」の実用化に乗り出した。
「赤外線吸収式メタンガスセンサ」の開発は、同社の前身となる釧路コールマイン海外開発部門が立ち上がった2005年からスタートした。北海道大学と産業技術総合研究所との共同研究のもと、目指すは坑内採炭に適した安全性と高精度の測定力を有し、10万円程度の低コストで実現する「赤外線吸収式メタンガスセンサ」の実用化。この共同開発は北海道中小企業総合支援センターの支援を受け、2005年・2006年度の「共同研究開発補助事業」に認定された。
KCMエンジニアリングの内田事業本部長は、「このメタンガスセンサの共同開発事業が国に認められたのは、産総研の紹介で訪れたHiNTさんのお力添えがあってのことです。炭鉱ひとすじでやってきた我々には、他の業界の方々との関係構築や技術開発に関するなにもかもがはじめてづくし。どうアピールすればいいか悩んでいたところに、HiNTの担当者の方から『御社のように日本で培われてきた技術が海外のマーケットでは立派なシーズになりうるということをもっと書面でも強調すべきです』とご指導いただき、申請書もより説得力のあるものに仕上げることができました。我々だけでは到底成し得ないことでした」と振り返る。
「赤外線吸収式メタンガスセンサ」の実証試験機。同センサは炭鉱現場以外にも温泉採掘や危険ガスを伴う採掘現場への汎用が可能。来年度には実用型機が完成予定
KCMエンジニアリングの誕生を語るには2002年の太平洋炭礦閉山にまで話はさかのぼる。第二次世界大戦以降、エネルギーの主役は石油にとって代わられ、国内の石炭需要もより安価な海外炭の輸入が増大した。1920年の創業以来、約80年もの長きに渡り、釧路経済を支えてきた太平洋炭礦が閉山する。時代の流れとはいえ、釧路の地場産業を根幹から揺るがすこの一大事に地元の経済界は立ち上がった。
2001年12月、地元企業53社の出資による新生・釧路コールマイン株式会社が設立された。KCMエンジニアリング鈴木社長は、「“釧路コールマインは市民炭鉱である”という企業理念はこうした設立背景から生まれたものです。我々が今日あるのは釧路のみなさんのおかげです。恩返しのためにも、地場産業の活性化につながるような新規事業を成功させる。その使命を帯びてKCMエンジニアリングは誕生しました」と語る。
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