写真左から株式会社ウェザーコック代表取締役 山本真裕氏 (60歳)、専務取締役 山本一枝氏 (54歳)

教育や研究、博物館展示に活用される模型地図。現実の地形をどれだけ精確に再現できるか。長年格闘し続けてきた製作者にとって夢のような製作システムが誕生した。産学官の知恵が結集した「立体図面」は、コンピュータに地形データを入力すれば立体模型が自動製作されるという画期的な新システム。国際測地学・地球物理学連合(IUGG)2003年総会の展示では世界各国の専門家たちがその精度の高さに目を見張った。
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「立体図面」が完成する以前の模型地図の製作現場は、手作業が中心だった。製作時間の大半は道路の傾斜や川の高低など実際の地形データと模型の誤差を検証する確認作業に費やされた。模型地図を事業の柱とする株式会社ウェザーコックでは製作現場の効率化を目指して、1991年に自動切削装置を自社開発。2000年ごろから北海道立工業試験場(道工試)とともにさらなる活用方法を探り、描画装置の開発に乗り出した。
2002年には経済産業省の創造技術研究開発費補助金を受け、道工試、北海道大学大学院理学部、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究が始まった。その後1年をかけて、入力データをもとに自動切削装置が模型地図の原型を削り出し、さらにその原型に等高線といった記号も直接印刷できる「立体図面」が完成。製作期間も大幅に短縮され、高い精度を誇る理想の立体模型製作システムが誕生した。

手作業時代は表面加工の磨きで製作者の指はぼろぼろに。「立体図面」以降は徹夜作業もなくなった
「立体図面」の活用の場は北大、産総研とともに模索した。最大の特徴は写真や平面地図、CGでは伝えられない細部までもがひとめでわかる豊かな表現力にある。傾斜、勾配がリアルに再現できる利点からハザードマップ(防災地図)や大規模な土木建築現場でのニーズも見込んでいる。
2003年6月には「立体図面」の完成度を世に問うため「国際測地学・地球物理学連合」の展示ブースに出展した。
ウェザーコックにとって初めての国際学会展示。チャンスを提供したのは当時HiNT立ち上げの構想を練っていた産総研だった。地球科学を専門とする太田英順コーディネーターと中川充総括主幹の全面的なサポートを受けて迎えた展示当日は、世界各国の専門家たちが口々に日本の技術力を高く評価したという。その後も同社は精力的に学会展示に参加し、2007年には「火山都市国際会議島原大会」にも出展。国内外で着々と認知度を高めている。

実寸の10分の1模型をスキャンし大型の造形物をつくるデジタル三次元コピーの技術も確立。シマフクロウの翼も反転データを使えば両翼の出来上がり。
ウェザーコックと産学官の歩みは1977年の創立までさかのぼる。もとが北海道教育大学で美術を学んだ山本社長を中心とするベンチャー企業。道工試との人脈も早くから築いてきた。「"産学官連携"という言葉がまだ定着していない時代にその有効性を自分たちで実感することができました。産学官のタッグで底冷えのする北海道経済を盛り上げたいという想いは人一倍強かったと思います」。
こう語る同社の山本専務は現在、北海道中小企業家同友会産学官連携研究会の副代表と広報を兼務する。
"産学官"にありがちな敷居の高さを感じさせない北海道の活動は全国でも珍しいと指摘する。「立場を超えて参加者全員がフラットな関係でいられるのはおおらかな道産子気質もあるでしょうが、みなさんが北海道経済の行く末に抱いている深刻な危機感のあらわれでもあります。いまや民間の一企業ができる技術開発は限界に達しています。大学や研究所が持つ科学技術に新たな可能性を見い出し、北海道全体が豊かになる道をこれからも探り続けます」。
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