(株)GEL-Design(ジェル・デザイン) 代表取締役社長 附柴 裕之氏(33歳)

株式会社GEL-Design

高機能ジェル開発のスペシャリスト
ユニークな自社製品も製造・販売

北海道大学の研究成果の実用化を目的に、高機能ジェル素材の研究開発、関連製品の製造・販売に取り組むベンチャー企業(株)GEL-Design(ジェル・デザイン)。 北大や民間研究機関と共に専門特化した研究を進めるかたわら、保冷剤一体型ランチボックスや手作り石けんなど一般消費者向けのユニークな自社製品を世に送り出し、業界内外から注目を集めている。同社代表取締役社長の附柴裕之さんに、起業の経緯や自社製品誕生秘話、産学官連携事業の課題についてお話をうかがった。 (2007年5月1日)

※本ページの内容は取材当時のものです。

就職目前の直談判から、起業の道へ

附柴裕之さんが初めてジェルと出会ったのは、北海道大学理学部の研究室に進んでからのことだった。先輩が先行して進めていた「丈夫なジェルを作る」という研究テーマに魅せられ、のめりこんでいくうちに気がつけば卒業、就職が目の前に。

附柴さんは考え抜いたすえ、担当教授や就職先の社長に「あと一年間研究を続けたい」と申し出た。幸い、固い決意の附柴さんを周囲の大人達は快く応援してくれ、研究に没頭する日々が再び続いた。しかし、時間は無限にあるわけではなかった。

「教授や社長達を説得する際に、自分の研究成果を実用化するために特許を申請するし、論文も書く、学会でも発表すると宣言していましたから。早く具体的な行動を示したくて、最終的に北大発のベンチャー企業を立ち上げるという結論にたどり着きました」。

もともと前例がないことや新しいことに燃える性分だという附柴さん。2004年9月には高機能ジェル研究の実用化を掲げるプロジェクトが北大リサーチ&ビジネスパーク構想推進協議会主催のインキュベーションモデルに採択され、同年に有限会社GEL-Design(ジェル・デザイン)を設立(2005年には増資し株式会社に組織変更)。研究開発型ベンチャー企業としての第一歩を踏み出した。

ジェルイメージ ジェルは90%以上が水でもしっかりとした形を持ち、 生体組織に近い物性を持つユニークな素材


ジェルはこんなに身近なところにいた

ジェルと言うと思い浮かぶのは、弾力性のある"ぷよぷよ"した不確かな感触。その柔らかさに秘められた可能性は、はかりしれないと附柴さんは分析する。 「人類の歴史を振り返ると、石や木、金属、プラスティックなど形がはっきりとした固体を材料として使ってきた経緯は周知の事実ですよね。ですが、柔らかくてすぐ形を変えるジェルのような素材を人類が使いこなしてきた歴史は、まだ浅い。今後さらに研究が進んでいけば、柔らかいジェルだからこそ必要とされる分野はたくさん拓けてくると思います」。

成分のほとんどが水で、外部の刺激に応答する、そして生体にやさしいという3つの特徴を備えるジェル。育児の必需品である紙おむつの吸水性ポリマーやソフトコンタクトレンズ、化粧品など私達のごく身近なところでも使われている。今後も医療現場やエネルギー・環境分野など幅広いフィールドでのさらなる応用が期待されている。


保冷剤一体型ランチボックスが大ヒット

設立当初、GEL-Design(ジェル・デザイン)の事業内容の柱は、北海道大学を中心とする研究機関との共同研究を通じて高機能ジェル素材の研究成果を実用化することだった。じきに、大手企業などから依頼を受けて行う技術開発のアウトソーシング事業が加わる。

しかし、「このままでは"普通の大学発ベンチャー"になってしまう」と危機感を抱き始めた附柴さん。「消費者と直接つながる自社製品を立ち上げたい」と考えていたところ、ある日、スタッフが知り合った主婦から「フタに保冷剤がついているランチボックスがあればいいのに」という声を聞きつけてきた。

「保冷剤にはジェルが使われていますし、通常は温めたがるお弁当を冷やすというアイデアもおもしろい。当社の名刺がわりになる製品ができると確信し、すぐに試作品づくりに取りかかりました」。

そして2006年3月、GEL-Design(ジェル・デザイン)の自社製品第一号となった保冷剤一体型ランチボックス「GEL-COOL」が誕生。販売も自社サイトのインターネット通販で展開した。フタを冷凍庫で凍らせて使うことで保冷効果は4時間以上(外気温25°環境にて)。サラダやフルーツを冷たいままおいしく食べられるうえに食中毒予防にもなると好評の声を集めた。さらに、2006年の「グッドデザイン賞」など多数の賞を受賞。当初の目論みどおり、同社の"看板製品"となった。

2007年5月には、姉妹シリーズとして札幌にある円山動物園のホッキョクグマ、ピリカをモチーフにした「GEL-COOま」も発売。新たなファン層を増やしている。

GEL・COOL 「GEL・COOL」の鮮やかな色づかいは全8色。「コーン」や 「Sky」など北海道の食材や自然をイメージした。1個840円。

オスとメスの2種類ある「GEL・COOま」。 「この顔を見ながら食事することで地球温暖化を考えるきっ かけにしてくれれば」と附柴さん。1頭1,050円


手作り石けんで自然環境の保全にひと役

自社製品のもうひとつの柱に、人と環境にやさしい天然素材にこだわった手作り石けんシリーズ「Savon de Siesta(サボン・デ・シエスタ)」がある。ジェルとは無縁の手作り石けんを製造・販売するこの事業は、市販の石けんが肌に合わない創業メンバーの一人(附柴彩子さん)が個人的に石けんを作り続けてきたノウハウを社会に役立てたいという思いからスタートした。

"自然環境の保全に役立つ企業″を目指すGEL-Designとしても全面的にバックアップし、確かな専門知識を有するスタッフによる品質管理体制も整備。道内各地域と連携した商品開発や、製品の売上の一部を植林に活用する活動も進めており、将来的には同社の中核を担う事業たるべく成長を続けている。

2004年には、「Savon de Siesta(サボン・デ・シエスタ)」の製造技術が見込まれ、札幌市経済局やノーステック財団、民官企業、デザイナーとの恊働プロジェクトに参加。札幌の冬に舞い落ちる雪の結晶をかたどった紙石けん「初雪」の商品化に協力した。開発開始から1年半を経て、今年のさっぽろ雪まつりで「初雪」を試験販売したところ、会期中前半で完売するほどの人気を集めたという。

大学での「知」の成果を世に送り出し、地域経済の活性化を促進、意欲的な若い人材をサポートするというGEL-Designの企業理念を象徴する事業として今後も注目したい。

ジェルイメージ 理学修士・AEAJ認定アロマアドバイザーの資格を有する 附柴彩子さんが中心となって展開する「Savon de Siesta(サボン・デ・シエスタ)」。 http://www.at-siesta.com/


連携の土台は担当者同士の信頼関係

GEL-Design(ジェル・デザイン)のオフィスは現在、北海道大学北キャンパスの一角、北海道産学官恊働センター内にある。設立3年目となる同社のこれまでの事業を通じ、産学官での連携について附柴さんはこう振り返る。

「今、携帯電話を販売するときに『インターネットに接続できます』と表現するメーカーはいないですよね。それはもう当たり前のことになっているから、です。“産学官連携”に関しても、この言葉に頼らずとも、それぞれの立場から協力しあい、世の中に貢献することが当たり前のこととして認められる社会に一日も早くなってほしいと思っています。

大通りにあるHiNTは、ちょっとした取引先との打合わせや外出時にPCで仕事をしたいときに気軽に活用でき、情報収集やスタッフの方々への相談も出来るため、時々活用させていただいております。

また、セミナー室では道内企業の方々を集めた勉強会や、産学プロジェクトの会議、例えば、「初雪」の試験販売成果報告会で使わせていただいたこともあります。

今後、企業同士の交流や、産官学の垣根を越えた交流の場に発展していき、新たなアイデアやコラボレーションが生み出されるサロンのように機能していって欲しいと願っています。」

ジェルイメージ北海道産学官恊働センター内のオフィス。 北海道大学創成科学共同研究機構プロジェクト研究棟にも入居し、 85㎡の研究室を借りている。

株式会社GEL-Design

  • 〒001-0021 札幌市北区北21条西12丁目コラボほっかいどう
    (北海道産学官恊働センター)2F
  • TEL・FAX.011-709-2260
  • http://www.gel-design.co.jp/
  • 代表者/代表取締役社長 附柴 裕之
  • 従業員数/役員5名、従業員7名、準従業員12名(パート・契約・派遣社員含)
  • 設立/2004年9月29日
  • 資本金/22,300 千円
  • 主な事業/機能性ジェル素材に関わる以下の業務
    1. 新規素材の製品・技術の特許販売
    2. 新規素材の研究開発・分析の受託、コンサルティング
    3. ジェル素材を利用した製品の開発企画・製造販
株式会社GEL-Design

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