明治コンサルタント株式会社 事業開発室 専門課長 山本英樹 氏(41歳)

明治コンサルタント株式会社

土壌環境、斜面防災に新風
初めての自社製品が完成

公共事業を主軸としてきた建設コンサルタントに変革のそよ風が吹き始めた。産学官連携や共同研究の勢いに乗り、2011年には業界では珍しい自社製品の販売もスタート。土壌環境、斜面防災のために自分たちができることは何か。<地質のプロフェッショナル>明治コンサルタント株式会社の挑戦が今、日の目を見ようとしている。 (2011年11月1日)

※本ページの内容は取材当時のものです。

寒冷地対応のバイオレメディエーション

 明治コンサルタントの山本英樹さんが所属する事業開発室は、昨年出来たばかりの新設部署なのだという。前身は明治鉱業株式会社の地質部だった同社が地質・建設コンサルタント業を営み、約半世紀。官公庁や大手民間企業との仕事で蓄えた実績の中から次代に継続できる新規事業の芽を探す—。事業開発室の発足以前から壮大なミッションを帯びていた山本さんは社内外に目を凝らし、まず初めに寒冷地に対応できる土壌修復技術「バイオレメディエーション」の開発に乗り出した。

 薬品や油、排水の漏えいなどの人為的原因から有害物質に汚染された土壌は、人体にも影響を及ぼす可能性がある。そこで登場するのがバイオレメディエーション、微生物の働きで有害物質の分解を促進する技術である。ところが、微生物の活動が弱まる寒冷下ではその技術を生かしにくい。

山本さんたちの開発チームはそこに目を止めた。「この問題を解決できたら北海道の冬期にも生かせる技術となる」。北海道経済産業局の紹介でHiNTを訪ね、産学官連携による共同開発の一歩を踏み出した。


微生物の働きで土中の有害物質の分解を促進する技術「バイオレメディエーション」。


実証実験まで終了、土対法普及にも一役

 山本さんの話を聞いたHiNTから中小企業基盤整備機構にバトンが渡され、数ある助成事業の中から「中小企業・ベンチャー挑戦支援事業のうち実用化研究開発事業」が推薦された。バイオレメディエーションの主役である微生物の働きを活発化し、あらゆる気温下でも浄化作用を加速させるために土の中を高温環境にしたい。共同研究のメンバー探しは「未利用資源を用いたたい肥化熱の活用が鍵」と考えていたため、たい肥処理の専門家である北海道農業研究センター資源化システム研究北海道サブチーム、そして環境微生物の権威である北海道大学の森川正章教授、ベンチャー企業のエコルネサンス・エンテックに協力を依頼した。「土木業界とは畑違いの専門家に関心を持っていただけたことがありがたかった。頼もしいメンバーでした」と山本さんは振り返る。

 研究開発は土壌に混ぜる有機資材の選定から始まった。農業残さやおがくずなど20種類以上のサンプルで昇温性や臭気を調べ、小型たい肥化装置の中で模擬汚染を作ってはテストを繰り返した。その結果、最も適した資材は草本系バイオマスであることが判明。

実証実験でも油膜臭が消え土壌修復に有効であるというデータが得られ、現在は実用化を待つ段階にまで進んでいる。2010年には土壌汚染対策法が一部改正となり、土壌汚染調査の契機がより増えると考えられている。明治コンサルタントでは、北海道経済産業局と共同で「企業・事業者のための土壌汚染対策セミナー」を実施し、普及啓蒙活動を通じて土壌環境保全にも努めている。


2010年に開催した「企業・事業者のための土壌汚染対策セミナー」


常日ごろの地盤変化を読み取る計測機器

 新規事業の芽を伸ばしたい山本さんたちの歩みは、その後も続く。産学官連携から次は企業間の共同研究へ。自社で初めて所有する製品開発にも取り組んだ。キーワードは<斜面防災>。土砂崩れや地滑りなど斜面災害の予防には山や河川、地盤の“常日ごろの変化”を読み取る計測技術が重要になる。経験豊かな技術士の納谷宏さんが中心となり、香川の精密機器メーカー・レクザムとの共同開発が始まった。

 完成した製品は2つある。1つ目は「拡散レーザ変位計」といい、離れた二点間の距離変位を測定する。現在は対象となる二点間にワイヤーを張りその伸縮を測定する方法が一般的だが、測定距離は20m程度。しかもワイヤーを覆う保護管の設置に手間がかかるために交通の妨げになる場所には付けられないなどの制限がある。ところが、「拡散レーザ変位計」は本体から発射されるレーザ光線を反射板で反射させて二点間の距離を計測する方式のため、どこでも容易に取り付けることができる。測定距離も100m強と飛躍的に延長した。同時に、直径3〜20cm大の拡散レーザを使うことで雨雪や粉塵の影響も受けにくく、人が直視した時の目へ安全性も配慮されている。「GPSと伸縮計の中間性能を持つので100m強の変位計測の需要に最適。橋などの構造物維持管理にも汎用できます」と、納谷さんは胸を張る。


工学博士でもある北海道本店技術部防災課長の納谷宏さん。


拡散レーザ変位計設置事例と反射板。2011年4月から販売開始。詳細は明治コンサルタントまで。


実情を把握できる低コストの監視装置

 レクザムとの共同開発製品2つ目は、「簡易傾斜監視装置」だ。前述の「拡散レーザ変位計」が二点間の距離を計るのに対しこちらは地盤の傾きを測定する。レーザーを用いて「ワイヤレス」を実現した拡散レーザ変位計同様、こちらもデータ取得を無線通信で行っており、ワイヤレスで運用するメリットは両者に共通している。高さ17cmの単管パイプの内部に付けられたわずか6mm角の加速度センサが地盤の傾斜角度と方向を検出。これまでは定期検査ごとだったデータ更新頻度が一新され、設置直後から連続データを蓄積できる。

 年内発売を目標に価格を検討中だが、「今普及している機器の半額以下になる予定です」と納谷さん。廉価でワイヤレスならば限られた予算でも設置本数を増やし、調査エリアの傾斜を広範囲な“面”でとらえることができる。「より実情に即したデータを集めることで土砂災害の予防に貢献できます」。高機能はもちろん、コスト面でもおおいに注目を集める機器になりそうだ。


「監視傾斜監視装置」の計測イメージ。


「簡易傾斜監視装置」設置事例。設置後は危険地域に足を踏み入れることなく連続データを収集できる。


同一孔による地中のひずみと地下水の計測を両立

 明治コンサルタントのパートナーはレクザムだけにとどまらない。中小企業基盤整備機構の仲介により九州の坂本電機製作所とも共同開発が進んでいた。メートル単位で地中の動きを監視する「パイプ傾斜計」の誕生である。仕組みは実にシンプルで、加工した塩ビパイプにMEMS技術を活用した加速度センサを取り付けたもの。簡単設置、連続計測、高耐用性、購入しやすい価格設定が可能、と従来にない利点を集めただけでなく「地中の変動をXY軸の傾斜角度で表示。感覚的にわかりやすいところも魅力です」と納谷さんは補足する。加えて、地滑り調査に欠かせない地下水位の計測空間もこのパイプ内に確保できるため、別立てのボーリング孔が不要。現状の調査コストを大幅に抑えられる計算だ。こちらは2012年の販売が計画されている。

 新規事業を求め異分野に参入する同業他社も少なくない中、明治コンサルタントはあくまでも創業以来のホームグラウンドにこだわった。「私どもが勝負するならやはり<地質>を軸に。今後も産学官連携や異業種交流の刺激を受けながら、当社の技術力を広くアピールしていきたいです」山本さんたちの揺るがぬプロ意識がここで紹介した3製品からのさらなる発展を予感させる。


ものづくり中小企業製品開発等支援補助金採択事業により実現した「パイプ傾斜計」。パイプひずみ計と孔内傾斜計、両者の長所を兼ね備えた。

明治コンサルタント株式会社

  • 〒064-0807 札幌市中央区南7条西1丁目13第3弘安ビル
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  • 代表者/代表取締役社長 山川雅弘
  • 従業員数/254人(技術職 174人、事務営業職 80人)
  • 設立/1965年4月28日
  • 資本金/8,000万円
  • 事業内容/
    1. 土木、建築、防災並びに防水工事に関する各種の地質調査、土質調査、試験、測量設計及び施工
    2. 都市計画及び地域開発計画事業に関する計画、設計
    3. 地下資源に関する各種の地質調査、開発計画及び設計
    4. 水資源の調査及びさく井
    5. 環境衛生及び公害に関する調査及び設計
    6. 公共事業に必要な土地等の取得若くは使用、これに伴う損失の補償又はこれらに関連する業務
    7. 情報・データ通信システムの調査、施工並びに維持管理に関する業務
    8. 前各号に関連する機器・システムの研究、開発、製作、販売、レンタル及びリース
    9. 不動産賃貸業
    10. 石油類・液化ガス類の製造・貯蔵・販売施設及びこれらの付属設備に関する設計、補修、保全、点検及び清掃業務
    11. その他前各号に附帯する事業
    12. 海外における前各号の事業

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