株式会社北海道霊芝

自社一貫生産のプラントで
高品質霊芝の人工栽培に成功

札幌の建築設備会社、央幸設備工業(株)のグループ企業である(株)北海道霊芝に今、アジア各国から注目が集まっている。取扱商品は健康食材の中でも漢方生薬として人気の高い「霊芝」(マンネンタケ)。自社一貫生産のプラントを札幌近郊に作り、(独)産業技術総合研究所の協力を受けながら、高品質霊芝の人工栽培に成功。健康食品メーカーへの原料提供やOEM商品の製造依頼、自社製品の販路拡張など国内外から引き合いが続いている。 (2011年3月15日)

※本ページの内容は取材当時のものです。

道内初、希少な鹿角霊芝を人工栽培

「霊芝」と聞いてピンとくる人はおそらく人一倍健康意識の高い方ではないだろうか。霊芝、すなわち和名マンネンタケ(万年茸)は漢方生薬の一種で、およそ二千年前に編纂された中国最古の薬物書「神農本草経」にも記載のある伝統的な漢方生薬である。中国や日本では霊芝には幅広い薬能があるものと信じられ、さまざまな目的に用いられてきた。その効能を裏付けようとさまざまな基礎研究が世界で行われており、培養細胞や実験動物を用いた研究では抗癌作用、免疫賦活作用、血小板抗凝固作用などが報告されている(斜体文字部分はウィキペディアの「霊芝」より引用)。

その名の通り鹿の角の形をした鹿角霊芝(ろっかくれいし)は、注目成分のうち最も多く含まれるβ1,3-グルカンの含有量が通常の霊芝よりも多いといわれ、これを材料とした健康食品を国内の健康食品メーカーが競って商品化している。しかし、品質やトレーサビリティなどの問題から"玉石混淆"の市場となっていることを憂う業界では、いかに安全・安心で高品質な霊芝を安定的に供給するかが大きな課題となっている。

この課題に正面から取り組む道内企業が、札幌に本社のある株式会社北海道霊芝である。母体会社である央幸設備工業株式会社の霊芝研究開発部を前身とする同社は、2004年から霊芝栽培をスタートし、翌年には赤霊芝、続いて霊芝の中でも生産が難しいため珍重される鹿角霊芝の人工栽培に成功し、札幌近郊の自社プラントでの一貫生産を実現した。2008年には北海道霊芝が開発・製造した商品を取り扱う販売会社、株式会社旺煌(おうこう)が設立され、栽培から商品の製造、販売まで「オール・メイドイン北海道」の挑戦が始まった。この3社を担う尾北紀靖社長に詳しいお話をうかがった。


中国最古の漢方薬書『神農本草経』に不老長寿の上薬としての記載がある霊芝。写真は通常のキノコと同じようにカサが開いて成長する赤霊芝。


鹿の角に似ていることからそう名付けられた「鹿角霊芝」。自然界でその生育条件が揃うことは非常にまれで、幻の逸品といわれている。β-グルカンを豊富に含んでいる。



本業である空調設備の観点から商機を発見

今年設立45周年を数える建築設備会社が、いかにして霊芝栽培という未知の異分野に参入したのか。尾北社長にそのいきさつから語っていただいた。「霊芝が、特に鹿角霊芝がアジアで珍重されているという話は10年くらい前から耳にしていました。栽培が難しく、現地では"漢方の王様"といわれるほどの最高級品だと。すでに本場中国では人工栽培が行われており、日本でも人工栽培で作られています。ならば我々にもできないだろうかという漠然とした思いを抱いていたときのことです」

おりしも国内の人工栽培に関するニュースが入ってきた。だがそれは栽培を断念したというシビアな内容。一体なぜ? 疑問を抱いた尾北社長が足を運んだ現地工場で見たものとは――。「栽培を断念したという決断はいろいろな原因が積み重なってのことだと思いますが、私の目に真っ先に飛び込んできたのは栽培施設の空調設備です。設備工事を本業とする技術屋の立場で見ると、どう考えても原理原則から外れた問題点が各所にありました。そのときに"自分たちの技術があれば人工栽培ができる"という確信が芽生え始めたんです」

霊芝は空調制御されたクリーンルームで植菌された後、培養室で長期栽培されるため、温度や湿度などの細かな条件次第で品質や含有成分が容易に変化する。設備事業のオールラウンダーである央幸設備工業ならば、培養・栽培に最適な環境設備を実現できる。そう考えた尾北社長の決断により新分野への取り組みが始まった。


札幌近郊のプラントで行われている鹿角霊芝の空調栽培。



中小企業の挑戦を産総研の菌研究者がサポート

幸いなことに、尾北社長たちの挑戦をさらに推し進める強力なパートナーとの出会いがあった。当時産総研北海道センターに所属していた菌類研究者、星野保(ほしのたもつ)氏の存在である。
「HiNTさんとは以前から面識がありましたが、"もし霊芝栽培技術の向上に興味があれば産総研の星野さんを紹介する"と言われるまでは、まさか我々みたいな中小企業が相手にされるとは思ってもいませんでした。産学連携なんて到底無理だろうと。しかし、高品質の道産霊芝栽培に取りかかると決めたものの、我々だけでは到底人材不足であり、菌類の専門家の協力が必要なことは明らかでした。自社プラントを見学にいらした星野先生が"ぜひ一緒にやりましょう"と言ってくださった時点から、北海道初の霊芝栽培に関する産総研との産学連携が始まりました」

そこからは道産原木の調達に始まり、本業の空調・配管技術を駆使した菌床作成、クリーンルームでの植菌と、産総研のアドバイスを得ながら徐々に培養・栽培環境を整えていった。培養栽培に欠かせない水は北海道の地下水を使い、品質を決める栽培条件については温度、湿度、光、炭酸ガス濃度などさまざまな要素の組み合わせを変えて、研究開発を繰り返した。プラントを含めた全設備を自社技術で開発・製造し、自社一貫体制にやがて朗報が訪れた。


本社に展示されている霊芝サンプル。


「霊仙命湯」シリーズは「北のブランド2012」に認定されている。



品質が認められ、国内外からの引き合いが続々と

2010年、産総研 生物プロセス研究部門 遺伝子資源解析研究グループにより、北海道霊芝が栽培している霊芝の菌種は国のDNAデータベースに登録されているマンネンタケの遺伝子配列と同種のものであると確認された。さらに北海道霊芝の鹿角霊芝にはマクロファージ(免疫細胞の中心を担う細胞の1種)に働きかけるβ-グルカンの含有量が100g中60.6gという分析結果も出た(財団法人日本食品分析センター調べ)。
「公的機関の分析によって、私どもの霊芝が国内はもとより世界的に見てもトップクラスの品質であるということが確認され、大きな自信をもつことができました。こうした結果を得て、2012年2月には産総研さんと共同で特許出願をしています」(出願番号「出願2012-044082」)

現在は、北海道霊芝が栽培する霊芝を販売会社と同名の「旺煌」と名付け、それを原材料とする煎じ茶やティーパック、サプリメントの「霊仙命湯」シリーズを自社のオンラインショップ(http://www.oukou.jp/)で販売中。「今後、霊芝に含まれるガノデリン酸Aに着目して産総研さんとの共同研究を継続し、さらなる品質向上に向けて取り組んでまいります」と尾北社長は語る。この道産霊芝には販路拡張や技術供与、健康食品メーカーからの原料供給依頼など、国内やアジアの国々から幾つもの引き合いが来ているという。


日本発展に尽力した高齢者の幸せを願って

央幸設備工業、北海道霊芝、旺煌の3社を束ねる尾北社長は、逆境を原動力に変えられる気骨の経営者だ。多額の負債を抱えた社員12名の設備会社の立て直しを「若気のいたりで」買って出たのは、28歳のときだった。着任早々独自の経営理念と方針を打ち出して業務効率の向上に努め、1人の従業員も解雇することなく会社を再生させた。4年間で負債を全額完済したのちに社名を「央幸設備工業」に変え、「社員の幸せを会社の中央に置く」企業づくりを貫いてきた。

その尾北社長が全く畑違いである霊芝の人工栽培に乗り出した理由は、中小企業の生き残りをかけた多角経営の他に、もう一つの思いがあった。「今、日本はとても豊かで我々はたくさんの恩恵をこうむっていますが、ここまでこの国を成長させたのは他でもない、75歳以上の後期高齢者です。その方たちの健康づくりを我々がお手伝いしたい。そんな思いが当社の霊芝には込められています」

グループ企業の母体である「央」「幸」はどちらも左右線対称の二文字を使う。「裏も表もない会社」という誠実さを表現したかったからだ。そんなグループ会社で作られる道産霊芝には、同じ読みを使い「生命が旺(さか)んに煌(きら)めく」という願いをこめて「旺煌」と命名した。社員の幸せに加え、今度は高齢者の幸せへ。尾北社長の有言実行がまたひとつ形になっていく。


「安全な高品質漢方薬原料・商品の供給は北海道霊芝の使命です」


株式会社北海道霊芝

  • 代表者/代表取締役 尾北 紀靖
  • 従業員数/5名
  • 設立/2011年4月
  • 資本金/500万円
  • 培養・栽培ブラント/札幌近郊
  • 事業内容/
    • 霊芝の培養・栽培
    • 霊芝を使用した健康補助食品の研究・開発・製造

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