水産系廃棄物ホタテガイ貝殻の有効利用法の開発を目指して

セミナーの日時 2011年6月29日
セミナーのタイトル 水産系廃棄物ホタテガイ貝殻の有効利用法の開発を目指して
講演者 長谷川 靖(ハセガワ ヤスシ)教授(室蘭工業大学 大学院工学研究科 くらし環境系領域)
セミナーの紹介  北海道の特産品でもあるホタテガイの貝殻は水産系廃棄物として年間約30万トンにも及ぶ量が廃棄されており、一部は有効利用されているもののその多くは廃棄され、海岸等においても山積みされている光景を見たことがある方々も多いかもしれない。貝殻は99%が炭酸カルシウム(CaCO3)からできており、残り約1%がタンパク質や糖質などの有機成分からできている。貝殻の有効利用を行う多くの研究が貝殻の炭酸カルシウムに着目した研究であるが、炭酸カルシウムは安価であることから、貝殻を洗浄、粉砕して炭酸カルシウムとして再利用するにはコスト面が大きな問題となる。貝殻をさらに有効利用するには付加価値の高い有効利用法の開発が必要と考え、1%程度しか存在しない有機成分に着目しその有効利用をめざし研究を進めてきた。本発表では、貝殻中の有機成分が脂肪組織に与える作用にしぼり出来るだけ簡単に紹介したい。
 貝殻粉末を3%含む餌あるいは炭酸カルシウムを3%含む餌をラットに毎日10gずつ5週間与えた後、ラットの脂肪組織重量を測定した。その結果、貝殻粉末を含む餌を食べたラットにおいて脂肪組織の重量が有意に減少していることが分かった。しかし、炭酸カルシウム自体にも脂肪組織重量を減少させる効果が認められたことから、貝殻から炭酸カルシウムを除いた有機成分を大量に調製し、有機成分を2%含む餌を同様に食べさせ脂肪組織重量を測定した。その結果、貝殻有機成分を含む餌を食べたラットにおいて脂肪組織重量が減少し血中コレステロール濃度も減少していることが分かった。貝殻中のどのような成分がどのようなメカニズムで働いているのだろうか?
培養細胞等を用いて検討を行ったところ、1)貝殻有機成分は脂肪前駆細胞から脂肪細胞になる過程(分化)を抑制し、細胞内への脂肪の蓄積を抑制する。2)貝殻有機成分中には、胆汁酸を結合し血中コレステロール濃度を減少させる因子が存在することが明らかになった。
 現在、貝殻抽出成分のこれらの作用が生体内でも同様に働いているかどうか検討を行っている。今後、作用機構および作用する物質を明らかにし、脂肪組織重量、血中コレステロール濃度を減少させる健康食品、あるいはペットフードや動物の飼料などへの適用が可能かどうか検討を加えていきたいと考えている。講演では、その他ホタテガイ貝殻に含まれる成分の興味深い構造、性質等についても時間があれば紹介する予定である。

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