北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
木工・鉄工業を主な対象とする北見市工業技術センターでは、まず初めに中小企業の基礎体力づくりに取り組んだ。北見市補助金事業で新たな技術や製品・デザイン開発を進めるかたわら、地道なCAD研修会や各種講習会の開催にも力を入れた。
「業界全体がCADに移行する時期でもあり、“勉強したい”という企業からのご要望に応える形で研修会が始まりました」と進藤さん。「今では、研修会に参加してくださった企業に、私たちが“こういうときはどうすれば?”と聞くこともあるほど。我々の目的は地元企業のお役に立つことですから、研修会で紹介した技術が実際の現場に深く浸透している現状が嬉しくもあり、大きな励みになります」と語る。
基礎体力づくりの次はさらなる高みを目指したくなるもの。北見市工業技術センターは、平成10年度から事業予算も桁違いになる「地域新生コンソーシアム研究開発事業」(経済産業省)に積極的に手を挙げ始めた。その結果、平成19年度までに10本もの実績を残し、最大で4本が同時進行した時もあったという。
そのうちの1本が、冬の道路を舞台とする「吹雪障害防止のための翼側誘導板を有する新型高性能防雪柵の開発」(平成14年度〜15年度)である。従来の吹払い式防雪柵では視程が確保できず交通事故の多発につながっていた。一方、新型高性能防雪柵は翼型の誘導板を用いて風雪を上空から吹き飛ばすことで、「道路空間の吹雪濃度の低減効果を生み出す」(報告書より)。北見工大からは流体工学を専門とする坂本弘志教授が参加した。5年間に渡る風洞シミュレート実験が高い成果を上げ、見事開発が実現した。
他にも「寒冷地向け低コンポスト省エネ型コンポスト製造プラントの開発」や「タマネギの新規有用部分を利用した機能性食品の開発」など北見の地域特性を活かした事業が進められていった。
勤務15年目の今では幅広い人脈と豊富な知識で誰からも頼られる進藤さんだが、そのベースにはどうやら平成10年度以降の多忙を極めたこのときの経験が横たわっているようだ。
「自分たちも経済産業省など国の担当者を相手にするのは初めての経験で最初の頃は何がなにやらの状態でした。それでも3年もたてば相当鍛えられて、道筋が見えてくる。“誰に何を聞けばいいのか”“この分野は誰が一番詳しいか”というような人脈づくりが事業の行く末を大きく左右することも、この時期に学ばせてもらいました」と当時を振り返る。
北見といえば豊かな林産資源を背景とする木工業も見逃せない。(…次のページへ)
進藤 覚弥さん
「我々の目的は地元企業のお役に立つことですから」
製品などの設計(デザイン)をコンピュータを用いて行うこと。またはコンピュータを用いた製図システムそのもののこと。
〜地域において産学官連携による事業化に直結する実用化技術開発を促進することにより、新産業の創出を促し、もって地域経済の再生を図ることを目的として〜(略)
経済産業省WEBサイトより