北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
コーディネーターにとって参加した共同研究の商品化は何よりの励みになる。十勝の畑作を代表するジャガイモからでんぷんを作る際の残さに着目した「馬鈴薯からの有用ペプチドの生産技術開発」(都市エリア産学官連携促進事業)もその一つだ。
私たちの体内でたんぱく質はアミノ酸に分解される。少数のアミノ酸がつながったものをペプチドという。帯広畜産大学のラットを対象とした健康機能性評価によると、ジャガイモ由来の「ポテトペプチド」は生活習慣病予防への効果が期待できることが判明。コスモ食品株式会社(芽室町)の製造技術により2年の歳月をかけて健康機能性食品素材「ポテ味(あじ)」が完成した。現在、食品メーカーに向けて販売中だ。飛川さんは取材日の前週にも東京の展示会におもむき、企業と共に「ポテ味」をPRしてきたという。
飛川さんの仕事を一言で説明するのは難しい。事業の中で料理コンテストがあれば買い出しにも走り、農作業や混合ガソリンの製造を手伝ったりと具体例を挙げたらきりがない。産学官連携コーディネーターになるためのマニュアルなどがあるはずもなく、毎回の経験がすべて教科書がわりだという。
「主役は企業さんで、私たちはいわゆる下働き。事業がうまくいくコツ? それがあったら私も知りたいくらい。結局は、経営者や大学の先生がたのことを知りたい、そして自分のことを知ってもらいたいという熱意が伝わるかの“人間関係”に集約されていくのだと思います」
仕事では地元での人間関係を築いていく一方で、家族サービスはどうしているのか。飛川家には家庭を守る妻と中学1年生の長女、小学2年生の長男がいる。「休日はもっぱら家族で買い物。下のぼうずが仮面ライダーディケイドに夢中なので一緒にカードゲームをすることも。今は親世代も楽しめるようによくできていますよね」
学生時代にはドラムをたたいていた飛川さん。「子どもたちは流行っている曲をたくさん聞きたいシングル派で、私は断然アルバム派。1枚のアルバムをじっくり聞くことでアーティストの良さがわかるし、そこから世界が広がっていく。娘にもアルバムを聞くよう勧めています」一人きりの車中ではエアロスミスやツェッペリンをかけ、マイワールドを楽しんでいるのだそうだ。
上司である中田さんと、大庭さんからみた飛川さん。(…次のページへ)
飛川 剛さん
「毎回の経験がすべて教科書がわり」
決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群である。1つのアミノ酸残基と次のそれの間の繋がりはアミド結合またはペプチド結合と呼ばれる。(Wikipediaより引用)
近年では、大豆ペプチドが清涼飲料水に利用されるなど、その機能性に注目が集まっている。