北のものづくりサポーター

北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します

この記事の内容は取材日(2009年2月10日)時点のもので、現時点では組織構成などが変更されていることがあります。

天然エネルギーで食糧を備蓄、食味にも貢献

 初仕事は、「氷冷熱エネルギー活用低コスト食糧貯蔵システムの実用化への取組み」。釧路の冷涼な気候に着目した案件だった。完成した氷冷熱エネルギー貯蔵庫の中は貯氷庫と貯蔵庫に二分されている。貯氷庫側には冬の冷気で水が自然凍結した氷を、貯蔵庫側には農産物や乳製品など低温保存したいものをしまっておく。貯蔵庫側に氷の冷気を送り込むファンを回す電気代だけで、食糧の備蓄ができるシステムだ。

 「さらに注目すべきは」と原田さんが続ける。「一般の電気冷蔵ですと食材が乾燥して100gのジャガイモが80gに目減りすることもあるのですが、このシステムでは適度な湿度が乾燥を防ぎ、食味を増す働きもあります」。雪冷蔵の取組みは道内数カ所で行われているが、雪が少ない釧路では密度が高く場所をとらない氷を活用する。地域特性を肌で感じる原田さんだった。

(写真)氷冷熱エネルギー貯蔵庫

人生初、往復7時間のサンマ漁に同行

 次に、「この仕事でなければ知らなかった世界」と原田さんを感動させた印象的な取組みを教えてもらった。それは、平成17年に釧路市漁協や北海道区水産研究所ほかとタッグを組んだ「地域新生コンソーシアム研究開発事業」の「サンマの生態を生かした新流通方式の構築」。活サンマを生きたまま流通させるという目的のもと、各団体が集まった。

 従来の漁ではサンマのウロコがとれやすく、水揚げ後まもなく魚は死んでしまう。そこで原田さんたちは漁法から見直し、なんと原田さん自らも漁師と共に船に乗り往復7時間の漁に同行、疑似餌を使ってサンマをそっと釣り上げたという。この事業自体は、沖合から釧路市フィッシャーマンズワーフMOOへ数十匹の活サンマを無事に移槽することで成功を見た。

 一方で、原田さんが手にした収穫も大きかったようだ。「実は釧路に来てから漁師さんとお話するのはそのときが初めてでした。釧路はなんといっても港町。漁業関係者に人脈ができたことは貴重な財産になりました」と語る。

(写真)原田さんが実際に乗った漁船

新しいことに挑戦する企業の意欲を応援

 釧路にIターンしてまもなく7年になる。技術支援コーディネートの経験を重ねながら、自分の中に打ち立ててきたことがある。(…次のページへ)

原田 隆行さん

「実は釧路に来てから漁師さんとお話するのはそのときが初めてでした」

雪冷蔵

 冬期間の除排雪などで溜まった雪から発生する冷気を、春以降食物などの貯蔵に利用するもの。電気を使用した一般的な冷蔵の5分の1程度の運転費用で済むという試算もあるが、倉庫の建設や雪の運搬などのコストの問題がある。

 ここでの事例は、釧路という地域性(下記参照)を活かした、雪ではなく氷による冷蔵である。

冷涼な気候

 釧路の冬は、気温の低さの割に比較的降雪が少ない。また、夏でも気温はそれほどあがらず、30℃を超えることはまれ。

サンマ漁

 一般的な漁法は棒受け網と呼ばれる網でサンマの群を一網打尽にするもの。この漁法だと水揚げされる際に鱗がほとんどはがれ落ちてしまう。

 また、サンマは生存したまま捕獲するのは極めて難しいと言われている。


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