北のものづくりサポーター

北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します

この記事の内容は取材日(2009年12月18日)時点のもので、現時点では組織構成などが変更されていることがあります。

研究者から一転、コーディネーター職へ

 偶然にもNEDO本部がある川崎市生まれの佐々木さん。大学時代は高層ビルに対する風の影響を計る風工学を専攻し、大学院卒業後は建設会社の研究員として勤務。NEDOへ出向していた時期もあり、平成16年から正式に入構した。

 平成19年の北海道赴任と同時にNEDO北海道支部はHiNTのメンバーとなり、道内全域の技術情報を共有するところから活動をスタート。最初にぶつかったのは距離の壁だった。東北6県よりも広い北海道。赴任の挨拶ひとつに目的地まで片道4〜5時間かかることも珍しくない。「地元の様子を見るという面では大変参考になりますが、そう簡単には埋められない地理上の距離に圧倒されて、地域の方々の協力をあおぎたいという思いが募りました」

 そこで佐々木さんがまず真っ先に頼りにしたのが、北海道在住の新技術調査委員とNEDOフェローだった。

1案件でも片道5時間を通う情熱が評判に

 新技術調査委員とは本業を別に持ち、情報提供者の立場でNEDOと共に産学官連携を推し進める協力者のこと。一方、NEDOフェローはNEDOが実施している人材育成事業で学ぶ若手の産学連携人材を指す。佐々木さんは地理上の距離を埋める作戦として地域のキーパーソンである彼らからの情報を活用した。

 実はそう言いながらも、佐々木さんの行動力は目覚ましいものがあった。赴任から現在に至るまで面談や説明会等を行った企業、大学はのべ500機関以上。たとえ1件のアポイントでも片道5時間の北見にまで足を伸ばす情熱が、多くの関係者に「NEDOが変わりつつある」という期待感を抱かせたという。

プロジェクトメイクの基本は「直接会話をすること」。そこからすべてが始まる。

NEDOフェローがつないだプロジェクト

 ほがらかな笑顔で「初対面でも壁を感じさせない」佐々木さんがやってきたNEDO北海道支部はにわかに活気づいてきた。平成19年春、佐々木さんは、北海道大学に籍を置くNEDOフェローの仲介でナトリウム-硫黄二次電池(以下、Na-S電池)のリサイクルを研究する北海道大学工学部の上田幹人准教授と出会う。

 Na-S電池は蓄電の容量が大きく充放電特性に優れ寿命が長いという特徴を持つ。自然界の気候に頼る風力発電や太陽光発電の蓄電媒体として道内でも重要な役割を果たしている。
 ところが、肝心のナトリウムは現在100%を輸入に依存。使用済みのNa-S電池からナトリウムを電解精製し再活用に成功すれば、金属資源の国内循環にも一石を投じることになる。

 研究開発シーズと産業ニーズが一致する本プロジェクトに期待を寄せた佐々木さんは、早速コーディネーターの立場から申請書作りをアドバイス。また、道内企業がこの技術開発を後押ししてくれることもプロジェクトの大きな強みとなった。こうして上田氏を代表者とする本プロジェクトは平成19年度にNEDOが公募した産業技術研究助成事業に応募した。ところが———。

不採択から学ぶ再チャレンジのヒント

 「残念なことに採択されなかったんです」。関係者の落胆とは別に、(…次のページへ)

佐々木 淳さん

「そう簡単には埋められない地理上の距離に圧倒されて、地域在住の方々の協力をあおぎたいという思いが募りました」

HiNT

「R&Bパーク札幌大通サテライト」の愛称で、Hokkaido Intelligent Network Terminal の略称。製品開発・新事業創出を行う『企業』、優れた技術や知識を持つ『大学・研究機関』、それらを支援する『行政』の連携(産学官連携)に関する情報の集積と発信を行う、産学官連携の総合窓口です。

OJT

 具体的な仕事を通じて、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを、意図的・計画的・継続的に指導し、修得させることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成するすべての活動

(Wikipediaより引用)


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