北のものづくりサポーター

北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します

この記事の内容は取材日(2010年1月25日)時点のもので、現時点では組織構成などが変更されていることがあります。

鮭とばをなぜ1日寝かせるのか

 小西さん自身の専門分野は食品の乾燥技術。前職の経験上、燃料機器に関する知識は豊富でも、素材の乾燥について当初はまったくの門外漢。転職後に初めて知った分野だった。

 「そもそもの始まりは北海道の珍味でおなじみの鮭とば。新機能乾燥装置の導入事業に関わることになり、まずは本職の方に鮭とばの作り方を一から教わりました」。聞けばそこでは、干物用鮭を3日間通風乾燥機に入れて1日寝かせ、また乾燥機を2日間動かして1日休みを繰り返す「3・2・2」の法則を守り抜いてきたという。

 「でも、なんで?って思いますよね(笑)。なぜ合間に乾燥機を1日止めるんだろうと。職人さん曰く、寝かせる間に素材の中の水分を蒸らして表に出させるためという話ですが、果たしてそれは学術的にどう証明されているのか、素材の大きさはどう影響するのか、“なぜ?どうして?”が一気に吹き出してそこから関心を持つようになったんです」

食品中の水を制御し品質をコントロール

 取り組み始めてわかったことがある。食品乾燥技術の大半は経験則によるものが多い。地元の加工会社は安価で扱いやすい通風乾燥機を求め、地場の機器メーカーが組み立てたものを長年使っている。それで事足りていた世界に小西さんは「なぜ」の光を当てた。センターでの日常業務のかたわら、乾燥技術をテーマに母校である北見工業大学の社会人博士課程で学び、ついには博士号を取得した。

 「乾燥とはすなわち食品中の水を抜くこと。水の状態を制御することで食品の設計全般をコントロールできるようになります」。食品中の水には、比較的自由水に近い「弱束縛水」と凍りにくく脱水しにくい性質をもつ「強束縛水」の2種類がある。一般的な水産食品では弱束縛水が3分の2を占め、3分の1が強束縛水。さらに生の食材をマイナス5度下に置いた場合、前者は凍結し、後者は凍結しないことも明らかにされている。こうしたデータを活用すれば用途に応じた適切な冷凍保存が可能になる。

 「鮭でもイカでもじゃがいもでも、内に抱える水は水。食材を問わない品質管理も夢ではありません」と期待を膨らませている。学位を取ってからも学会発表や論文執筆はおこたらない。最新情報を取りに行くのもすべては函館に持ち帰るためだ。「小西くんの学位は自分のために取ったものじゃない」と田口室長も理解を見せ、二足のわらじを見守っている。

全国から問い合わせ「アクアクッカー」

 これまで開発支援した案件で大きな賞を二度受賞した。その一つ目が食品加工機械メーカーの株式会社タイヨー製作所が開発した食品加熱調理機「アクアクッカー」。平成20年度の北海道新技術・新製品大賞を受賞した。水蒸気に微粒の水滴を加えたアクアガスを用いた加熱で、うまみ栄養成分の流出が少なくなり、食品表面の瞬間的な殺菌も行う優れものだ。

 実はこうした受賞もいいものを作れば自動的にもらえるものではなく、小西さんら公募案件や手続きを知っている人間の他薦があってはじめて審査のテーブルに上がる。
「アクアクッカーは従来の加熱調理器とは一線を画する高性能。自信を持って推薦させていただきました」と小西さん。実際に本州企業からの引き合いも多く、いち早く購入した九州の食品メーカーではすでに稼働が始まっている。

フード業界でも「画期的」と評判が高い「アクアクッカー」

北海道生まれの新型暖房機に期待

 小西さん二度目の嬉しい受賞は、暖房メーカーの株式会社コーノが(…次のページへ)

小西 靖之さん

「“なぜ?どうして?”が一気に吹き出してそこから関心を持つようになったんです」

鮭とば

鮭とば(さけとば)とは、秋鮭を半身におろして皮付きのまま縦に細く切り、海水で洗って潮風に当てて干したものである。「とば」は漢字で冬葉と書き、冬の北海道・東北地方の風物詩となっている。また、「とば」がアイヌ語で「群れ」を指すことからくるとする説もある。

(Wikipediaより引用)


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