北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
小西さん二度目の嬉しい受賞は、暖房メーカーの株式会社コーノがコア企業となって開発・製造された新型暖房機HPH。平成21年度の北海道新技術・新製品大賞を受賞した。現在、函館市内近郊の小学校や介護施設およそ100カ所で使われている。
ひと昔前の小学校の暖房といえば大型ボイラーを有する温水パネルヒーターが大半を占めていた。だが修繕は大ごとになり費用もかかる。じきにFFのファンヒーターに取って替わられたが、今度は温風の不均一や空気の乾燥、埃の対流など課題が多い。
そこでコーノと道立工業技術センターは北海道立工業試験場の協力も得て、小型バーナーを内蔵した真空パネル暖房機の試作に取りかかった。バーナーで温められた水が蒸発と凝縮を繰り返して真空パネル内を巡回する仕組みを実現した。さらに電子制御機能も追加され、職員室などからの遠隔操作も自由自在。ふく射熱で体にやさしく低コストで場所を取らない理想の暖房器が誕生した。
「そもそも暖房機は北海道で最も必要とされるもの。その北海道で生まれた理想の暖房機として東北や関東エリアにも広く供給されるように成長していってほしい製品です」。
子どもたちや高齢者の暖かい冬を見守る新型暖房機HPH
大学時代の恩師にたたきこまれた思いがある。やりもしないでできないとは言わない。「できない理由を並べるのは簡単ですし、ついそう言いたくなる。学生のときもそれでずいぶん怒られました。でもそのおかげで今の自分がいます」。
自分たちはあくまでもサポーター。企業の飽くなき熱意を応援する。途中で壁に当たることもある。そこで進むか引くか、いずれの道をとるにしてもすべては「企業との信頼関係から始まる」と小西さんは言う。
「あと10年20年も経てば、国内の食品メーカーはアジアに向けた製品開発に本腰を入れるようになり、輸送の手段として乾燥や冷凍技術が求められる時代がやってきます。そのときに函館が拠点となり、北海道の食材を世界に発信していけたら嬉しいです」。
日常の仕事と食品乾燥技術の研究、両立が大変ですねと水を向けると、田口室長が本人に代わって「いや、この人はほとんど好きでやっているから大丈夫」。笑いながらうなずく小西さんを見ていると、どうやら本当のことらしい。
多忙な身だが、小学2年生と6年生の娘の父親業も大事な務め。普段は妻に任せがちの育児も、百人一首の会やピアノ、バレエの発表会には欠かさず出席し、ひときわ大きな拍手を送っている。
小西くんがセンターに入ってきた頃は、(…次のページへ)
小西 靖之さん
「企業との信頼関係から始まる」
物体から出る熱エネルギー。床暖房やオイルヒーターが出すようなじんわりとした熱のことで、室内全体を暖める性質を持っています。