北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
大学の研究者と地元企業の距離を縮めるために城野さんが企画したマッチングイベントがある。タイトルは「『北海道企業の力』セミナー」。HoPEとの合同企画として平成22年度から始まり、これまで5回実施。創薬や工業機械、バイオテクノロジーなど各分野で優れた技術を持つ地元企業が研究パートナーを探す研究者に対してプレゼンテーションをする“企業版学会”のような空間だ。
毎回告知ポスターに使われているキャッチコピー「まずは人と人との繋がりから始めませんか?」が示すように、発表後には名刺交換の時間も設けられている。「すぐに反応がなくてもあの場で交換した名刺一枚がきっかけになってくれたら」という企画者の思いが通じたのか、開催の一年後に企業への問い合わせがきたという実例もあるそうだ。
「幸いなことに北海道大学の先生は会社規模や知名度にとらわれないフラットな目線で研究パートナーを探している方が多く、意欲の高い地元企業さんにとっても研究者との出会いが刺激になるはず。双方の期待に応えるようなマッチングの場にしていきたいです」。
第5回「『北海道企業の力』セミナー」風景。
会場は北大工学部のアカデミックラウンジ。毎回60名近くの参加者が集まる。
「部内の担当表を見ると、他のスタッフは“バイオ”や“電子”といった担当分野が記入されているんですが、私のところだけ“函館”という大きなくくり(笑)。あらためて大役の重みを実感します」。城野さんがこう話す背景には2年前に設立された函館サテライトの存在がある。
北大の札幌キャンパスにある産学連携本部だが、活動の対象は学内および札幌だけに限らない。各地域に根ざした支援組織や研究機関、他大学、地元企業とも密接につながる〈外向きの活動〉を進めるべく、2012年6月、札幌以外で初の産学連携本部サテライトが函館に立ち上がった。その担当者に抜擢されたのが城野さんその人であり、函館港近くにある北大水産学部を拠点に月一、二度、JR北海道で通う函館詣でが始まった。
「函館はまちの規模が大きすぎず小さすぎず、産学連携にはうってつけの土地。地域のまとまりがよく企業同士の勉強会も盛んに行われています。水産学部の先生たちも結束が固く、情報の共有が速くて助かっています」。
さらに通い出してあらためてわかったことに「水産学部が持つ専門性の幅広さ」があると城野さんは指摘する。
「水産学部がカバーする研究領域はいわゆる“魚の養殖”だけではありません。発生生理学などの基礎研究に始まり、昆布などの海草を含めた養殖、加工、経済、船舶…と海・水産・漁業のことならオールラウンド。どの先生も“研究は社会の役に立ってこそ”という実学の視点を大事にされているので私もそのお役に立ちたい、とモチベーションが上がります」。
城野さんが関わっている進行中のプロジェクトを2つほど紹介していただいた。1つ目のキーワードは「藻場(もば)の造成」…【次のページへ】
城野さん:「私のところだけ“函館”という大きなくくり(笑)。あらためて大役の重みを実感します」
北海道中小企業家同友会=Hokkaido Platform Entrance。北海道中小企業家同友会と北海道大学先端科学技術共同研究センターとの連携を基に、北大・北キャンパスエリアに広がる道立研究機関、コラボほっかいどう、研究成果活用プラザ北海道の産学官連携機能を活用して、21世紀の北海道経済の活性化を目指し、2001年6月に設立。
大学や公設試験研究機関のシーズと企業のニーズを結びつけ、新しい産業の創出、ビジネスチャンスの拡大を目指す。
http://www.hokkaido.doyu.jp/hope/
水産学とは『水圏から生産される食糧資源やその他人類に有効な生物資源、無機資源とその利用に関する科学・技術』(北海道大学水産学部ウェブサイトより引用)のための学問。
海洋生物科学科、海洋資源科学科、増殖生命科学科、資源機能化学科を擁する。