北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
企業支援を始めた当初、物事が生まれる起点あるいは分岐点にいられる楽しさに気がついた。同時に、どんな専門家でも専門外の分野には思わず臆してしまうことも。
「確かに、不慣れな分野に対して無責任な発言はしづらいでしょうが、“どうなるかわからないからこそ、やってみませんか?”と門外漢の自分なら言える。それに材料卸業者にいた経験もあるので、使おうとしている素材を見れば、多少自分でも言えることがあるかもしれません」
プロジェクトは十中八九、順風満帆とはいかない。関係者の背中を押したり、あるいは「いまは時期尚早」と止めたりすることも大事な仕事のひとつだ。良いときも立ち止まるときもいつも、次に向かう元気をくれるのは、「お世話になった、ありがとう」の一言だ。「それが自分たちの存在価値だと思っています」
事前の取材シートで道北地域の人々の気質を問う欄には、「温厚で面倒見が良く、困った人をほっとけない人が多い」と回答した。「押し付けがましくはないけれど、ハートが熱い人が多い」証拠に、力つきて倒産した企業の従業員を同業者が割り振って引き受けたという話も明かしてくれた。
いまの職場に転職後、JBIA認定インキュベーション・マネージャー(IM)の資格を取り、現在は指導もできるシニアー・インキュベーション・マネージャーも取得した。全道に点在するIMたちとまめに連絡を取りながら、次の開発につながるヒントを探っている。
平成23年4月、組織移管・改称にあたり、「旭川産業創造プラザ」と命名したのは、実は中川さんだと聞いて驚いた。「これは私の感覚ですが、産業支援というとどこかおこがましいような気がして。道北の熱い経営者さんたちと一緒に地元を元気にする産業を創造していきたい。そんな思いで提案しました」
父は大阪で町工場の経営者だったが、経営不振で生まれ故郷の北海道比布町へ一家でUターン。「金を払って勉強しているのが社長だ」の一言が、大人になったいまも中川さんの心に残っている。
カッコイイ経営者の姿を子どもたちに見せたい。仕事の根っこにその思いがある。
仕事を離れると、マンガ好きで知られる。次のページに登場する後輩の澤井さんには、第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞したあの名作を一気貸ししたことも。登場人物の侠気にハマり、ファンを増やそうとしている。
私自身は財団勤務4年目。経理にいたときから、中川さんの丁寧な仕事ぶりを見ていました。中川さんを一言で表すと…【次のページへ】
中川さん:「“どうなるかわからないからこそ、やってみませんか?”と門外漢の自分なら言える。」
日本ビジネス・インキュベーション協会(一般社団法人JBIA)認定制度。「産業創造」を目的に、新事業の創造や起業家を育成する専門家。約5カ月間の研修で、T(Tactics):Micro観点による起業者と事業の速やかな育成戦術/S(Strategy):Macro観点による地域産業創造の策定戦略/W(Will):活動を展開するうえでの明確な意思/P(Passion):起業者をモチべートし地域全体をリードする情熱を修得する。