北のものづくりサポーター

北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します

この記事の内容は取材日(2010年8月5日)時点のもので、現時点では組織構成などが変更されていることがあります。

木材の需要を伸ばす「改質」に挑戦

 木材には次にあげる3つの弱点がある。燃える・腐る・狂う(寸法が変化する)。そのうち「腐る」は、加工品にとって致命傷だ。そこで薬剤などを注入して性質を改善する「改質」の必要が出てくる。「ところがですね」と、八鍬さんが続ける。

「道産木材のカラマツやトドマツは水や油、薬剤などを吸収しにくい難注入性材なんです。そこで、オホーツク管内の企業共同体と一緒に、木の表面に孔を空けて直接薬剤などを注入するインサイジング(浸透性改善処理)装置の開発に取り組みました。処理速度や強度への影響など課題は多く、今も研究は続いています」

 昭和30年代、成長が速くて強度があるカラマツは北海道に大量植林された。炭鉱の坑木や線路の枕木、電柱などインフラ整備に欠かせない資材として北海道の発展を下支えしてきた木だが、平成の今ではコンクリートや金属に取って代わられている。「改質が軌道に乗れば、資材市場で再び木材が脚光を浴び、道産木材の需要が一気に広がります」と八鍬さんは期待を寄せる。

命を預かる耐雪型木製ガードレール

 平成10年、前・建設省(国土交通省)が定める防護柵(ガードレール)の設置基準が改訂された。規定の性能を満たせば木材の使用が認められるという。平成16年には「美しい国づくり」の一環として景観法が施行された。このチャンスに旭川の業界4社が北海道産木材利用協同組合を作り、林産試験場に共同研究を依頼。平成16年から北海道の景観に寄り添う耐雪型木製ガードレールの開発が始まった。

 ガードレールの本体(ビーム)には12cm 角のカラマツ集成材を使うことにした。雨雪をためないように45度傾けて設置し(尖った角は落として面取り済み)、雪解け時に金属支柱に何トンもかかる負荷を見越して、支柱は根巻きコンクリートで固定する。開発は順調に進むなか、大きな壁に突き当たった。

 人命に関わるガードレールの性能は実車衝突試験で示さなければならない。だが、乗用車とトラックを一台ずつぶつける一回の試験費用は2千万円。費用を工面するため、助成事業に精通する八鍬さんたちが奔走した。最後はようやく探し当てた森林整備加速化・林業再生事業の助成金で費用を捻出し、晴れて「車両用防護柵(B種)」として認められたのは今年3月のこと。完成品はイタリア語の「景色」をとって「ビスタガード」と名付けられた。

北海道型木製ガードレール「ビスタガード」は今年(※取材時2010年)6月から販売開始。
詳細は林産試験場まで。

曲げた木材でガレージや椅子づくり

 平成18年から今も続く研究テーマに、わん曲集成材がある。「直線の木を曲げられればデザインの自由度が生まれ、汎用性も高くなります」。そう語る八鍬さんが中心となり、薄い集成材に接着剤を塗布し、何枚も重ねてわん曲させながら圧をかけ一枚に固める製造機械を開発した。

 一人でも操作性が高く、従来にないデザイン加工にも対応できるため将来的なニーズが見込める。この製造機械を使って出来た木製ガレージは現在千歳の日本ドアコーポレーション株式会社で販売中だ。“オケクラフト”で知られる置戸町の企業体も機械を導入し製品開発に取り組んでいる。

 また、このとき八鍬さん自身もわん曲集成材を使った「いす」を考案。職場での「八鍬さんはアイデアマン、手先が器用で何でも作る」人物評通りの腕前を発揮した。前フレームが肘掛けも兼ねており、ハンモックを思わせる大きなカーブがユニークだ。

わん曲集成材を使った木製ガレージ。
八鍬さんが考案した「いす」。意匠登録もされている。

デザイナーを魅了した色彩浮造り合板

 長い研究開発の道のりには思いがけない副産物もある。(…次のページへ)

八鍬 明弘さん

「改質が軌道に乗れば、資材市場で再び木材が脚光を浴び、道産木材の需要が一気に広がります」

カラマツ

樹皮は暗褐色で鱗状である。葉はマツより短めの針葉で、20 - 40本が束状に生える。葉はそれほど濃密ではないので、林内はそれほど暗くならない。

成長が早いことから、木材利用が逼迫した時期には寒冷地での植林樹種として利用された。このため、中部地方以北ではあちこちに人工林が存在する。北海道にも明治以降大量に植林された。

(Wikipediaより引用)

トドマツ

樹高は通常20-25m程度だが、大きいものでは35mに達する場合もある。葉は長さ15-20mm程度で先端は二裂する。球果は黒褐色で5-8.5cm程度。トドマツの分布域には、他のモミ属樹種は自生しないため、他樹種との区別は比較的容易である。

(Wikipediaより引用)

ガードレール

国土交通省道路局の方針を定めた「防護柵の設置基準」で、設置される場所、目的などに応じてSS種(衝撃に対する強度650kJ以上)~C種(同45kJ以上)などの強度種別が決められており、道路区分(高速道路とそれ以外)、設計速度と設置区間(一般区間、重大な被害が発生するおそれのある区間、新幹線などと交差または近接する区間)に応じて設置基準が定められている。例えば、高速道路の一般区間にはA種が、主要国道などの一般道路(設計速度60km/h)の一般区間にはB種が用いられている。

(Wikipediaより引用)


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