北海道の産学官連携の要になる人々を紹介します
長い研究開発の道のりには思いがけない副産物もある。低価格で取引されてきた道産カラマツ、トドマツの高付加価値化を狙った「光る合板」の開発途中では、「色彩浮造り(うづくり)合板」が完成した。
「浮造り」とは木材の表面を削り取ることで素材本来の凹凸や木目を強調する伝統的な加工技術だ。この浮造りを顔料で着色した接着剤を使った合板で試したところ、色鮮やかな木目の表情が浮かび上がってきた。「これを使ってなにかできないか」、八鍬さんは人づてで知り合った札幌の家具デザイナー吉本亜矢さんに話を持ちかけた。後付けでなく木の内側からにじみ出てくる色彩が吉本さんを魅了したことは想像に難くない。
そうして誕生したのが、旭川の有限会社杏和建具の協力を得て作られたオープンシェルフ「IRO」である。凹凸のリズムを刻む外枠には下の写真の通り、オレンジ色に染まった木目が絵画さながらの効果を見せている。「IRO」は日本インテリアプランナー協会が主催した国際展示会「IPEC-2008」で見事大賞に輝いた。メード・イン・北海道のインテリアとして現在も高く評価されている。
トドマツの色彩浮造り合板を使ったオープンシェルフ「IRO」。
顔料の色を変えれば仕上がりの趣も違って楽しめる。
勤務20年、中小企業をパートナーに研究開発を続けてきた八鍬さん。日々決断を迫られる企業経営者と歩調を合わせるため、「時間厳守と、返事はできるだけ早く」を実践する。
「今もこれからも変わらぬ目標は、林産試験場の研究成果で大きく利益をあげられる企業を生み出すこと。従業員やその家族の生活を担う地場企業をしっかりと盛り上げていきたいです」。
さらにこう続ける。「木は企業だけでなく、ガーデニングなど一般家庭にもなじみのあるもの。どなたでも気軽に触れられる機会を増やして草の根から木の魅力を普及できたら、今後の展開も大きく広がっていくと思います」。
学生時代はラグビーに夢中だったスポーツマンである。「夫婦で楽しめるものを」と町内の卓球サークルに入会し、旭川市の大会にも出場する。
次ページに登場する加藤さん、橋本さんらと林産試験場の野球チームで活動していたことも。ポジションはキャッチャー。「スタルヒン球場で4番を打たせてもらった試合はいい思い出です」
平成2年に林産試験場に入った同期です。工学部出身の(…次のページへ)
八鍬 明弘さん
「時間厳守と、返事はできるだけ早く」
木材の木目(年輪)を引き立てて見せるようにする焼杉の加工。 焼杉以外の木材でも用いられるが、焼杉の場合、炭化して色の濃くなった部分と元の木材の色合いのコントラストがより映える。 焼杉の表面を特殊な道具で擦ることにより、春夏に成長した柔らかい木目の部分のみを削り、秋冬の堅い木目を残す。これによって、板の炭化した黒い部分が筋状に盛り上がり、白い部分が凹むようになり、木目を立体的に目立たせる。
(Wikipediaより引用)